nishikien’s blog

お茶に纏わる事柄をつらつらと。

お茶の品種をとりまく事柄~その②

茶の品種をとりまく事柄<その2>

高価格で売れやすいのはどんな時でしょう?手っとり早いのは茶期が早く世の中にまだ新茶が出回らない時であれば売れていきます。買い手からすれば選択肢が無い状況でもあります。高い=高品質ではない。その後は時間とともに生産量増えて、必要とする内容と品質が釣りあえば行き先が決まっていくようになります。早生品種導入や加温(ハウスやトンネルなど)による促成栽培をする理由は早いタイミングで高く売れる時に市場に製品を投入したいからです。

全国に目を転じてみて、温暖な地域での茶生産が有利な理由は茶期が早いという部分が大きいのです。生産が早く始まるということは、価格が下がるのも早いということになり、後発の産地が生産を始めた際には価格面でも有利に展開が出来ます。

茶の生産というのは単位面積当たりで得られる収入を計算して行われるもので、お茶が高くても、安くても得られる収入は変わらないようにしたいのです。高価なものを少量か、安価のものを大量にかの掛け算をし、つまり、茶期の早い品種や摘期が長く品質が悪くなりにくい品種が重宝されるようになります。

やぶきたは現在、生産量が最も多く「中生」となっていますが登場した時は「早生」の品種でした。茶期が早く、芽の硬化が緩やかで摘期が長く品落ちがしにくいことは、芽が不揃いな在来種の製品が多かった時代には夢のような品種であったでしょう。やぶきたの導入が遅くなった産地において、やぶきたの苗が手に入ると聞いた生産者が「ああ、これでやっといいお茶がつくれる。」と言葉を発したそうです。

飛び抜けた個性がなく、清涼感のある香りと旨味、火香とのバランスの良さ(これらは摘期が長い特徴に関係する。)は茶問屋にとっても都合がよかったのです。
高度成長期を経て人々は豊かになっていく時代。輸出作物から国内消費へ。生活が豊かになると人は鮮度感のあるものを好むようになる傾向があり、和食とも相性がよく、多くの人が素直においしいと感じるものだったはずです。

生産者と加工流通業者、消費者のニーズが一致し車輪が回っていきました。やぶきたの栽培面積が広がっていったのには理由があったのです。~続く~