nishikien’s blog

お茶に纏わる事柄をつらつらと。

茶の紡ぐ物語 摩利支

「日本に来て良かった」の言葉で終わる書籍の校正が昨日完了。最終稿ですとのタイトルのデータが届いた。

これを読むなら、やはり、日本茶を傍らにと思い、18年ほど前に、オリジナル急須をと取り組んだ当時の品を棚から取り出した。

この急須の年の離れた兄弟は世界を旅していると言うのだから、何とも愉快なものだ。いれるお茶はやはり、TOP OF THE EAST。

最初の原稿を読んだのは6月中頃だった。これは手強いなあと苦笑いしながらプリントアウトした頁を繰っていったのを思い出す。

諦めない事、前を向く事、真摯である事、情熱を常に、人との出会い、別れ、きっと誰の日常にもある出来事なのだろう。彼が特別なわけでものない事を読んだ人は気がつくのだと思う。

私の立ち位置は少々異なる。自らの扱い品は日本茶のカフェのメニューに成り得る断言し、いれ方、見せ方などを含めて組み上げたものが、今はもう無い東京の和カフェで採用されたのがこの物語の始まりだった。メニューの名前は「摩利支」そして「大葉水香」。

「お茶に熱心な若い衆だなあ。俺のお茶は好みじゃないだろうけど、見においで。」と笑顔で声をかけてくれた生産家。摩利支と名付けられた深蒸し茶、生産家の人柄、産地のロケーションは自らの狭隘な性根を打ち壊すには十分だった。出会ってからの4年間は本当に楽しくてしょうがなかった。この4年があったからこそ今の自分がいるのは疑うべくもない。

生産家の命日にまたがる日、偶さかに青い目の筆者と席を同じくして本の校正をし、2004年産の摩利支をいれた。カフェのメニューそのままのいれ方で。ひとつの茶が紡ぐ縁とは不思議なものだと染々と思う。

現実は小説よりもドラマチックで面白いものなのだろう。

お茶とはいいものだ。味や香りだけでなく、関わる人も、世界観も全てひっくるめて。