nishikien’s blog

お茶に纏わる事柄をつらつらと。

さて、茶業者にあったら訊ねてみるとしましょう。ところで、あなたはどんな急須でお茶をいれているんですか?と。

「急須の無い家庭が増えた」や「茶葉を使わなくなった。」といった嘆き節のような言葉を私の業界では耳にします。ペットボトルばかりでなんて話も合わせて。

お客さまや世の流れみたいに聞こえますが、それは間違いです。この状況は嘆いている人が作ったのですね。資格も必要無く、誰でも始められて「儲かる商い」であった茶販売。茶がどのように出来たかなどの知識を必要とせず、好き嫌いといった売る側の個人の嗜好で商売が成り立つのは供給よりも需要が上回っている時だけです。その延長に今があります。

私がお茶屋を始めた20年近く前は、こんな儲からなくなった時になぜなんてと言われたものでした。でも、始めるにはいい頃だったと思っています。売れない時ほど人は「なぜ」を考えるものです。

歴史を振り返ると茶販売の大きな流れは正直、褒められたものではありませんでした。エポックとなるような素晴らしい製品づくりとそれに便乗する模造品や粗悪茶の歴史です。それは今でも見え隠れします。

急須でお茶をと口にする人達が使う道具のお粗末さ。いれる道具に関しての不勉強はお客さまからも見えていることでしょう。

茶消費の大きな部分は日常茶であり、番茶でした。安価で常に傍らにあるお茶。現在はその地位はペットボトルが得ています。ペットボトルが安価なのかと言われるかも知れませんが、お茶をいれる手間までも値段にするのであれば安いのです。

品種茶の用意も単品で多種類が可能になり、精度の高い急須も手ごろな値段で買える時代になりました。お茶をいれることを楽しめる時代の到来。茶を扱う側の者がそれを活かさず、茶器に気を配らなくて誰がするのでしょう。

粗末な道具で「急須を使って」や「茶葉を使って」などと言うのは無理があります。少なくとも茶を生業とするのであれば、もうそろそろ手元にある急須について考えてみて欲しいものです。お客さまではなく、先ずはテーブルのこちら側から。
 
さて、茶業者にあったら訊ねてみるとしましょう。ところで、あなたはどんな急須でお茶をいれているんですか?と。