日本茶を海の彼方へ。日本に来て良かったの言葉を世界に。
2012年睦月、一週間のフランスにての仕事も最終日。
ベッドから起き出して身支度を始める。黒のシャツにスラックス、インストラクター証が
硬度高い水道水のせいでキシキシいう髪に手ぐしをいれてバンダナを頭に巻く。
16区のホテルから地下鉄で移動しノートルダム寺院を見ながらセーヌ川を越える。最初
市役所前のスケートリンク、その前で回るメリーゴーランドに一抹の寂しさを感じながら
開店に向けて準備をしていると興味深そうに覗きこんでくる好奇心旺盛な人々。
眼があって笑顔で頭をさげると扉を開けて「日本茶、好きです。いつからオープンなんですか?」と楽しげに尋ねる顔。
「まだ、準備中なんだけど時間があったら少しお茶飲みますか?」に「ウィ」の返事。
電気ケトルのスイッチをいれてから「どんな味のお茶を飲みたいですか?」と、お茶の好みをきく。
ベストのポケットから取り出した茶匙で茶葉をすくって急須へ。ケトルからお湯が沸いた
手を動かしている間に重なる言葉。「彼女も日本茶が好きで」や「息子が日本のこと興味
急須を傾けてお茶をつぐとふわりと香る匂い。
「どうぞ、お茶がはいりましたよ。」
「メルシィ」
小さな白磁の湯のみが口に運ばれる。
パッと変わる表情。綻ぶ笑顔。
「こんなに美味しいお茶は初めてです。」
「感動しました。」
の言葉。
私にとって何ひとつ日本と変わらない光景。
そして、その事を知ること出来たのが何よりの収穫。
さようなら、パリ。
私は去りますが、お茶は残ります。
あれから数年の月日が流れた。
海の向こうで美味しい日本茶が楽しめるお手伝いをしよう。
日本に行ってお茶を飲みたいと思う人が増えるように。
そんな想いが去来する師走。