nishikien’s blog

お茶に纏わる事柄をつらつらと。

人間の味はどんな味?

とある所に珍しい羊がいて、その肉はそれはそれは美味しいらしい。どんな味なんですかと尋ねると、風味豊かでまるで若い人間の肉のようなと・・・・。学生時代に読んだうろ覚えのブラックジョーク。

お茶の香味に関しての表現を教えてくれるようなセミナーは無いのだろうかとの話題が友人からあった。

お茶に関する仕事をしていると、時折出る話題だが非常に難しくもある。ヨコ文字や舶来の表現が好きな人はワインなどを参考にしたりもする。

難しい理由は比喩に使用する表現が直接的なものであれば、伝える側と受け取る側に共通の「言葉と経験」が無ければならないからだ。


近々の催事で分かりやすい例をあげるなら香駿やさくらかおり(静7132)にある特長的な「桜葉様の香り」だ。桜餅のような香りとするが、桜餅を食べた事が無い人には全く伝わらない。実際、外国において桜餅を食べた経験がない場所では「ベリー系」の香りと表現されることもある。
印雑系統の香りについても同様で、ジャスミン茶のようなと言葉を発する人がいるが似ているとはとても思えない。

そして、味や香りについてを感じる部分は個人差が大きく、事前に何を食べていたかによって、同じモノでも感じ方が変わる。

同じコンディションで呈茶したお茶が、Aさんは甘く、Bさんは苦く、Cさんは渋いなんて事は試飲の現場では普通に起きる。

香味に関しての感想は全て過去形であることを頭の中にひっかけておくのがいい。そして、いっそのこと全く別の表現をしてしまうのも方法のひとつでもある。


ベルベットのような、絹のような、雨に濡れた猟犬のような。視覚や触感からのアプローチ、郷愁や憧憬を表現に織り込む。落ち着いて考えるとまるでバカのようでもあるが共通言語としては機能することが多い。
何にしても、色々なモノを見て、味わうことしかない。その中で、ふさわしい表現を発見していくこと。

先人が良いとしたモノから学ぶことは多い。ただ美味しいや不味いとしたり、食べられればいい、使えればいいとする生き方で失うモノは考えている以上に少なくない。